罰恋リフレイン

「あの……今日はこんな空気にするつもりじゃなかったんだけど……」

私は氷室さんから一歩距離をとる。

「帰る……」

「薫待って」

「お願いです。話を聞いて!」

初めて見る必死な様子の氷室さんに足が止まった。

「ごめんなさい」

私に向かって頭を下げた。

「何の……謝罪ですか?」

「私は……ずっと日野さんに酷い態度だった……」

「…………」

思いがけない態度に言葉が出ない。

「ずっと日野さんが羨ましかった。蒼と付き合って、今でも蒼に想われてて」

「羨ましい?」

氷室さんが? 私なんかを?

「私は高校の時から蒼が好きだったけど、蒼は全然私を見てくれなかった。今でもずっと日野さんのことばかり」

「そんなことは……」

「見てきたから分かる。高橋くんたちの結婚式の前に別れてって言われたから」

「え?」

「この間蒼の部屋に行ったのは置きっぱなしだった私の荷物を取りに。でも日野さんがいるとは思わなくて」

蒼くんの家に行った時のことは思い出したくない。それなのに蒼くん本人も氷室さんも香菜たちも、私をそっとしておいてはくれない。

「私はずっと日野さんの代わりにされてた。それでもよかったけど、結婚式で日野さんと会えるって気づいたら蒼の気持ちは私にはもうなくなったのが分かった」

「…………」

氷室さんの言っていることが理解できなくてぽかんと口を開けた。

「高校の時……蒼に相手にされないことが悔しくて日野さんに酷いことを言った。ごめんなさい」

「酷いこと? そんな簡単な単語で片づけないでほしい。私が氷室さんの言葉と態度にどれだけ傷ついたか……」

「ごめんなさい……」

「大事なキーホルダーも盗られて、蒼くんの学祭の時も侮辱した」

「っ……ごめんなさい……」

蒼くんと同じくらい氷室さんにだって怒っている。私は氷室さんに何かをしたわけじゃないのに、一方的に傷つけられた。
< 95 / 105 >

この作品をシェア

pagetop