クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
 一日の業務を終えて仕事着から私服に着替える。肩を勢いよく上げても、薬を飲めば痛みをまったく感じないくらいになるまで回復した。

 腕や足に散っていた擦り傷は、かさぶたが取れて綺麗になった。

 今日は遅番だったので十九時を過ぎている。夏の夜はまだ明るく、時間の感覚がおかしくなる。

 いつものように駐輪場へ足を向けると、そこに見覚えのある姿を見つけて息を呑んだ。

 私の姿を視界に捉えた彼は気まずそうに片手を上げる。

「小春」

 久しぶりに名前を呼ばれて、心がざわっと波立つ。

「ちょっといいかな」

 水輝は両手をポケットに突っ込んだまま、オレンジ色の自転車の前から動こうとしない。

「どうしたの?」

「うん、ちょっと」

「ちょっと、なに?」

 水輝はポケットから片手を出して首の後ろにあてた。刈り上げた襟足を見て、髪を切ったんだ、とこの状況になにも関係ないことを考える。
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