クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
「私はあの子と二股をかけられていたの?」

「違うよ」

 面倒くさそうに言われて胸の辺りがもやもやする。

 頼みごとをしているのは水輝なのだから、もう少し誠意をもって接してくれてもいいだろうに。

 十六時過ぎ。中途半端な時間なので人通りはない。けれどいつまでも痴話喧嘩のようなやり取りをしていたら、そのうち誰かの目に留まるだろう。

「言わないよ」

「本当に?」

 念を押されて苛立ち、つい嫌な言い方をしてしまう。

「彼女が大切なんだね。私と違って」

「やっぱり怒っているんだろう」

「怒っているんじゃなくて、軽蔑してる。人を騙してお金を取るなんて信じられない」

「だからそういう話、迂闊にしないでくれる?」

 目を吊り上げて、睨みつける水輝の顔は初めて見るものだった。

 ……怖い。

 反射的にぶるっと身体が震える。

 逃げ出したいけれど、自転車は水輝の背に隠れたままだ。

「そっちだって、もう新しい男いるじゃん。もしかして同時進行だった?」

「そんなわけないじゃない」

 冷静に返したつもりだけれど、怒りで声が震えていた。
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