クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
 繋いだ私の手の甲を、形のいい唇まで持って行きそっと触れ合わせる。熱と柔らかな感触を受けて全身が震えた。

 まるで海外ドラマのワンシーンのようだ。

「今すぐにでもキスしたいけど。外だしね」

 クスッと声を漏らした、いつもより幼く見える姿が目に眩しくて声にならない。こんな甘い囁きをされたのは生まれて初めて。

「でも、これくらいはいいかな」

 身悶えている私の手をグイッと引き寄せて、逞しい胸に私を抱きとめる。

 遥人さんの胸の中は温かくていい匂いがした。心臓の音がうるさい。蝉に負けていない。

 緊張を逃がそうとそっと息をつく。すると遥人さんからも吐息がこぼれ落ちた。

「まいったな。このまま帰したくないんだけど」

 私ももう少し一緒にいたい。そう思ったら、無意識に遥人さんのシャツを掴んでいた。

「うちに連れ帰ってもいい?」

「はい」

 力強く頷いてから、ちょっとあからさまだったかなと恥ずかしくなる。

 遥人さんは私の身体を壊れものに触れるかのように丁寧に離すと、手を繋いで静かに歩き出した。

 無言なのがかえって照れくさい。

 日が暮れていちゃつくカップルしかいなくなった中、私たちは足早に駐車場へと向かった。
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