クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
「いつもと変わりないように見えたけれど。でもそうね。入浴介助はしていなかったわよ。白峰さんは気が利くから、入浴や食事の介助をしてほしいって入居者が多いの。痒いところはないかと聞いてくれたり、口元が汚れたらすぐに拭いてくれたり。そういう細かいところって、気がつかない人もいるのよ」

 その考えに行きつくということは、祖母は実際に体験しているのだろう。

 俺はこれまで仕事にかまけて祖母をおろそかにしていた。入居する前の施設の見学は一度もしなかったし、入居してからも訪れはしなかった。

 仕事が落ち着いたら、と言いわけばかりしていた。

「ばあさん。これまで会いに来られなくて、悪かった」

 ばつが悪くなり目を伏せる。

「そんなのいいのよ。遥人が来てくれなくても、皆が代わる代わる来ていたから」

 そう言われると余計に立場がない。

「陸が日本に戻ってきても、これからは遥人も顔を出してくれそうね」

 それはどう受け止めればいいのか。探るように祖母を見やれば、含み笑いをしている。

 まさか……いや、まさかな。

 浮かんだ考えを否定したが、次に放たれた祖母の言葉に絶句する。
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