褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません
弁当箱と水筒を入れたバッグを持ち、自分の席へ戻ろうと立ち上がる。

その時。



「ところで実玖──あのプレゼントは一体どういう意味なんだ?」

「い、意味?」

「……ちょっと来い」



険しい顔のまま廊下に連れ出された。



「今日雪塚さんに、『清水くんもあの制汗剤使ってるの?』って言われた」

「えっ……まさかつけていったの⁉」



ぶちギレ寸前の顔で迫ってきた兄から、ほんのりと雪塚先輩と同じ匂いが。

あー……これは制汗剤だけじゃなくて、フレグランスミストも一緒に使ったな。



「だってお前が学校で使える物って言ったから。つーか東馬にも、『今日、雪塚さんと同じ匂いがするね』ってツッコまれたんだけど……?」



「なんてことしてくれたんだ!」と睨まれ、怒りが湧く。

プレゼントしただけなのに、なんで逆ギレされなきゃいけないの⁉

そもそも、「学校で使え」なんて一言も言ってない!



「逆ギレしないでよ! ずっと雪塚先輩の匂いを探してるって言ってたからプレゼントしたのに!」

「だからその言い方やめろって! 俺は『香水を探してる』と言っただけで、『匂いを探してる』とは一言も言ってない!」



廊下を歩く生徒達をよそに口論し続けた私達。
互いに引き下がらず、昼休みが終わるまで続いたのだった。
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