褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません
「それ落としてこい! 飯がマズくなる!」

「ご、ごめん……」



「シッシッ!」と追い払われ、チクリと心が痛む。

人それぞれ好みはあるけど、そんなにキツい言い方しなくてもいいじゃん……。



「おい景斗! 苦手とはいえ、シッシッはねーだろ! 実玖ちゃんは虫じゃねーんだぞ!」



部屋を出ようとしたら、目の前でやり取りを見ていた先輩が声を上げた。

兄はご飯を口に詰め込んだまま黙り込んでいる。



「……ごめん」

「あ……落としてくるね」



あそこまで嫌がるんなら、今度からは自分の部屋だけで使おう……。



洗面所で匂いを落とし、再びリビングへ。

座ろうと椅子を引いたその時。



「実玖ちゃん! 意地悪なお兄さんの隣じゃなくてこっち来なよ!」

「えっ……」



「おいで~」と隣の椅子を引いた西尾先輩。

と、と、隣で……⁉



「あぁ? 俺が意地悪だって?」

「そうだよ。妹を虫扱いしたからね。おいで実玖ちゃん!」

「別に虫扱いしたわけじゃねーって!」



どうしよう……。

嫌なわけじゃないけど、ここで断ったら気まずくなるよね……。
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