王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
「リリィ」
王太子殿下は唐突にわたしを抱きしめ、ほうっと息を着いた。
「殿下…汚れてしまいます…お離しください」
「嫌だ」
まるでだだっ子のようにハッキリとおっしゃるのに、反対にこちらが呆れてしまった。
「……わたしがお嫌にならないのですか?」
「なるはずがないだろう」
キッパリと言い切る理由がさっぱりわからなくて困惑するわたしに、王太子殿下は意外すぎる理由を明かした。
「……他の女に嫉妬してくれるという事は、本当にオレを好きでいてくれるんだな、リリィ」
「……!で、でも……わ、わたしは……そんな醜い感情……持ちたくないんです」
「……そうだな。誰でも嫌な感情だ、だが」
王太子殿下はわたしが横になったベッドに腰を下ろし、わたしの髪にそっと触れてきた。
「……真剣に好きになればなるほど、自分の嫌な感情と向き合わねばならない。辛く苦しいものだ。綺麗な気持ちのまま人を好きになれたらどんなにいいか……だが、苦しいのもまた恋だ。リリィ……自分に正直に向き合うから苦しいだろうが、オレはそうやって自分に正直なおまえが好きだ」
「……!」
ほんの一瞬……遠くを見た王太子殿下の口から、意外すぎるお言葉がでて。驚いて固まるわたしに殿下はそっとキスをされ、抱きしめられた。
「リリィ、クレアとは昔何もなかったとは言わない。過去に卑怯な言い訳をしたくないからな…それは、クレアもクレアを大切に思うおまえも侮辱する事にもなる」
「殿下……」
王太子殿下が、彼なりに一生懸命に説明をしようとしてくれている……。その思いを汲み取ったわたしは、黙って殿下のお話に耳を傾けた。
「……クレアとは、オレバの城下町で出会った。当時彼女はある状況で追い詰められていて、逃げたがっているように見えたんだ」