友達以上恋人未満~これを愛というならside story~
溜まった疲れで、家に帰ってすぐにソファーに身を投げた。

このまま寝てしまいそうだな……

重い身体を起こしてシャワーを浴びて、溜まった洗濯物を明日の朝に予約して、またソファーに横になる。


梓はちゃんと飯食ったかな、とか。

まだ頑張ってんのかな、とか梓のことばかり考えちまう。

陽介に言われたからだよな、と自分に言い聞かせながら、

また起き上がって冷蔵庫を開けたが、何も作る気もしねぇし……

缶ビールを立ったまま呷るように飲み干して、またソファーに横になる。


重たくなっていく瞼。

目を閉じると、梓と出会ってからの思い出が甦る。


はじめて二人で飲みに行った日。

好きなアーティストが、好きな映画のジャンルも、お酒が強いのも同じだと知った。

どちらかがチケットが取れたら一緒に行こうと約束したから、シークレットライブに応募した。

電子チケットじゃねぇし……取れてたらサプライズで約束を果たしてやるか。


はじめて映画を観に行った日。

梓の手を握った。

小さな冷たい、指の長い女らしい手。


買い物に出掛けた日。

梓の誕生日の翌日で、ブレスレットをプレゼントしたな。

それを梓はずっと身に付けてくれている。

俺の誕生日には、ドイツビールを毎年くれるようになった。


桜を見に行った時。

指を絡めて手を繋いで、河川敷を歩いて桜を見上げる梓が可愛くて、はじめて額にキスをしたな。


花火を見に行った時。

梓が肩に頭を乗せてきて、寄り添って花火を見たな。


その度に、可愛いて仕方なくなって。

楽しそうに仕事をする梓のプライドと責任感の強さ。

それが時々、折れた時に甘えてくる弱さを受け止めたくなって。



俺は………梓とどうなりたいんだよ。

わかんね。

目を閉じたまま睡魔には勝てずに、ソファーで眠っていた。
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