友達以上恋人未満~これを愛というならside story~
思ったまま梓は、会いたいと言ってくれただけで、

どこに行きたい?と訊いても迷い出すだろう。

かと謂って、夜中に何処にも行く気もなく……

ただ、梓に触れたかった。



明らかに躊躇っている梓を家に連れて来て、とりあえずワインを飲みながら。

食べたいもの決まってか?


「何でもいいよ」


「何でもいいってのが一番困る」


「だって何でもいいんだもん」


明日、作ってやると頭を撫でると、うん、と笑顔になる梓が可愛いくて。

今までなら、ただ可愛いとしか思わなかった笑顔に今日は………

咄嗟に視線を逸らしていて。

名前を呼ばれた瞬間に、梓を抱き締めていた。

鼓動がいつもより速い。

今まで俺はどうやって、可愛いと思った時に対処していたのかさえわからない。


押し返そうとする梓を、ワイングラスを置いて両腕で抱き締め直して、

見上げてきた梓の瞳は、なんで?と訴えているようで……

好きだからだよ、と思いを込めて唇を重ねる。


はじめて触れた梓の唇は、柔らかさが俺好みで、もっと。

離したくなくて、舌を割り入れて梓の舌を絡め取ると、梓が俺のTシャツを掴んだのに気付いて。

自分が気持ちいい場所に舌を誘導すると、梓の吐息が漏れた。

気持ちいい場所が同じなのか?

もっと梓の唇を味わいたくなって、

上唇を甘噛みしたり、下唇を舐めたり、舌先だけを触れ合わせたりな愉しむキスに変えると、梓からキスをしてくれて。

気持ちいいのと、愉しくなってきたキスに………

額が自然と重なって、笑い合っていて。


「やべぇな……止まらねぇ……」


そうだね、と小さく呟いた梓の潤んだ瞳に煽られて。

僅かに残されていた理性の糸が、プツっと音を立てた。
< 7 / 12 >

この作品をシェア

pagetop