悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
「あら、だめよ。まだ起きたばかりで体力だって回復しているわけではないでしょう。もう少し体を休めないと」
「そうだよ。人間はちょっと生き急ぎすぎる」

 なぜだかミゼルカイデンまでもがわたしのことを引き留める。
 ていうか、竜の寿命が人間よりも長いからそういう感覚になるのであって、わたしはいたって普通の時間間隔で生きていますよ。

「ていうか、ここはどこですか?」

 そういえば、と気が付いた。
 黄金竜が住んでいる森(たぶん)って大陸のどこなんだろうって。

 そのとき、おとなしく大人たちの会話を聞いていたちびっこ竜が二頭こちらに近寄ってきた。

「おねーちゃんどこかに行っちゃうの~?」
「えええ! だめだよそんなの。まだ僕たちと遊んでいないのに」
 双子竜は体を揺らし始める。

「一緒に遊ぶの楽しみにしていたのよ」
「三日も我慢したんだよ」
「無理やり起こしたら駄目ってお父様が言うから」

 むぅっと膨れた声を出すこどもたち。
 いや、無理やり起こすって物騒な言葉聞こえましたけど。よかった、お父さんが止めてくれて。

「ねーねー、もうちょっと、ううん。ずっとここにいたらいいじゃん」
「そうだよ。ここ快適だよ」
「え、どの辺が?」

 素で聞き返してしまう。
 何しろここは竜の棲み処だ。しかも黄金竜の。

 この世界は一応魔法ファンタジーの世界。人間の他に何種類かの竜が生息をしている。
 黄金竜はその中でも人間にやさしい種族ではあるが、独自の文化を持ち人間の立ち入ることのできない土地に住まう、人間とは一線を画した種族なのだ。

 そんな竜たちのところでわたしが暮らせるはずもないだろうに。これだからお子様は無理言うから困る。

「わたしたちと毎日遊んで暮らせるところ!」

 それドヤ声で言うことじゃないでしょう。
 それなのに。

「あら、いいわね」

 なんて声が聞こえてきた。その美しい声、まさかと思って目の前の麗しいご婦人の顔を見る。彼女はそれはもう素敵な笑みを浮かべていた。

「子供たちも懐いているし、行くところが無いならしばらくうちに居たらいいわ、リーゼ」
 ちゃっかり愛称で呼び始めているし。

「リーゼって言うの止めてください。どうせ呼ぶなら……リジーとかロッテとか別の呼び方にしてほしいです」
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