悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 前世のいたずら甥っ子姪っ子を思い出したわたしはつい口調がぞんざいになる。
 あーあ、前世の記憶取り戻してから口が悪くなったなぁ。昔はそれこそ、絵にかいたようなお嬢様な言葉遣いだったのに。

「とにかく、人里へ行くの」
「言ってどうするの?」
「そうね、まずは国境を超える」

 見せてもらった人用の地図によれば、ここから一番近い人里はシュタインハルツ王国との国境らしい。

 わたしが今いるのがドランブルーグ山岳地域・不可侵山脈と呼ばれる地域。

 ここはシュタインハルツ王国が属する大陸の真ん中あたりに連なる山脈で、古くから黄金竜や青銀竜が群れを成して住まう場所。

 竜と呼ばれる人とは違う、魔力を有する生き物が存在するこの世界。はるか昔からドランブルーグ山脈に多く住まう竜たちの棲み処に人が立ち入ることを竜たちは否とした。そのもっと昔、人間たちが野心を持ち、竜に戦を仕掛けたことがあるというけれど、そもそも竜の持つ魔法の力に人が敵うはずもなく。人間と竜との間で不可侵の決まりごとができた。

 すなわち、人と竜が住まう場所を明確に分けるという約束が。

「それじゃあ短い間ですが、お世話になりました」

 わたしはぺこりとお辞儀をしてレィファルメアとミゼルカイデンに別れを告げる。

「とっても名残惜しいけれど、気を付けてね」
「寂しくなったらいつでも戻っておいで」

 夫婦はそれぞれ人の姿で見送ってくれた。

 わたしは森へと歩き出す。
 今わたしが着ている服はレィファルメアが用意してくれたもの。というか、どうして竜の棲み処に人間用のあれやこれが用意されているのか。謎だ。

 昨日までわたしが来ていたドレスは、さすがにそれだと外を歩きにくいからってことで彼女が用意してくれたのはチュニック風のワンピースとその下に履く足首までのパンツとブーツ。
 ひざ丈のチュニック風ワンピースは薄い青色で裾に刺繍が施されていて可愛らしい。この下に薄いグレーのパンツとブーツを履けば町娘の出来上がり。

 ブーツは底がしっかり丈夫だから山歩きにももってこい。しかも、山歩きように荷物を持たせてくれて、その中には簡易天幕だとか、携帯用食料だとか入っていた。
 過分な親切に恐縮だけれど、勝手に連れて来たのはおたくの双子ということもあってわたしはありがたく頂戴することにした
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