君と私で、恋になるまで
「何、好きな奴いんの?」
「……いるよ。」
「え、もしかして同期?」
「…そう。」
ニヤニヤと聞いてくる一樹に言葉短く打ち明けると、より一層楽しそうに笑う。
「今日このイベントに居る?見てみたいんだけど。」
「…そろそろお互い仕事に戻ろうか。」
ブースにはまた人が来始めているだろう。
時計を見つめて、不自然な会話の流れと共にそう告げるとやはりクスクスと笑われた。
「あ、後でブース行くかも。」
「なんで?」
「△社と面識ある?」
「え、私この間飛び込みで営業行ったよ。」
「オフィス移転した後のプロモーションとかをうちが依頼されててさ。イメージ掴むためにも一緒にどうですかって言われて今日来たんだよ。」
「そうなの!?」
「…まだ移転をどの会社に依頼するか決めかねてるみたいだから。ブースまわると思う。」
「それはありがたい…営業行った時は挨拶くらいであんまり時間も無かったから。」
「うん、じゃあ行くように伝える。」
「ありがとう。」
こんな風に、一樹と笑って、ましてや仕事の話までできるとは思わなかった。
「ちひろ。好きな奴いるんならさ。
今度は自分から動くの怖がんなよ。」
いつの間にか話を戻して、そんな風に揶揄うように伝えてくる一樹に苦く笑う。
「痛いところ突きますね。」
「…飲み会で報告してくれるの、楽しみにしてる。」
彼と別れた時、慰めなのかなんなのかよく分からない立ち振る舞いで、だけどずっと側で付き添ってくれたあの、気怠げな男。
今の私の、精一杯の恋の相手になんだか妙に会いたくなってしまった。
そう思いながら一樹の言葉に頷いた。