君と私で、恋になるまで
今まで、営業先や現場でミスをして怒られたことなんて山程あった。厳しい怒り声に、悔しい思いも沢山した。
___でも。
それって、ちゃんと"私"を見てくれてた。
こんな風に、"女性だから"
それだけで直接的にハネられることは、経験したことが無かった。
「(…私、今までもしかして恵まれてたのかな。)」
ひんやりと温度を失う思考の中で、やはり現状を客観視してそんな風に考えてしまう。
「……申し訳、ありません。今後、もし何かご連絡いただく際には別の男性社員に繋ぎます。
今日だけは、私からご説明しても宜しいでしょうか。」
体の強張りと好ましくない動悸を自覚しつつ、そう笑って尋ねると分かりました、とその男性は了承した。
なんとか、やり遂げよう。
そう思い視線を上げた瞬間、どうやらチラシ配りから戻ってきた瀬尾の姿が目に入った。
その姿に、私の視界はあっという間にぼやけそうになる。
瀬尾は、ブースで一樹とその男性の前に座っている私と視線を合わせた後、何故だか少し驚いた顔になって。
どうしたのだろう。
そう思う間もなく、ス、とその瞳はすぐにそらされてしまった。
仕事中なのだから当然なのに、それだけで寂しさを覚える自分がなんだか少し滑稽に思える。
震える手と、乾き切った喉から出る頼りない声を悟られないようにパンフレットを開いて、目の前の2人に向けて説明を始めた。