君と私で、恋になるまで
「明野さんが謝ることじゃ、無いのにね。」
一樹の立場で何かを言うのは無理な状況だった。
それでもわざわざ来てくれたのだと、私は瀬尾の言葉を聞いて微笑む。
「…うちのリーダーはどんな仕事にも丁寧だって、俺たちは呆れるくらい分かってる。」
「、」
いつものらりくらり、掴めない言葉で悔しいくらい翻弄してくるのに。
さっきの出来事を根掘り葉掘り聞いたりはして来ないくせに。
この男は昔からいつも、端的に、私を支える言葉を急に投げ込んでくる。
「…まだ今日は頑張らないと。
凹むのは、もうちょっと後にする。」
「じゃあその時は梅水晶死ぬほど食べて良いよ。」
「何それ。奢ってくれるの?」
急な謎の提案に思わず笑うと、奴も目を細めた。
改めて見つめた男の焦げ茶色の髪がいつもと違って少しだけ乱れていて、もしかしてあの人混みの中、慌てて探しに来てくれたのかな、と都合よく考えてしまう自分がいる。
「よく私の居場所、分かったね。ありがとう。」
「…うん。じゃあ、戻るか。」
安心したような言葉と共に離されそうになった腕。
____嫌だ、まだ、離したくない。
瞬時にそう思った私はなんと奴の右手をぎゅ、と咄嗟に握ってしまった。
「……え、」
「あ、ごめん…っ、」
短い驚嘆が聞こえてハッと我に返った私は、赤みを帯びる顔に気づきながらも、慌ててその手を離そうとした。
だけど。
「____まじで、勘弁して。」
そんなぶっきら棒な声が聞こえたと思った時には、私の眼前にはチカチカと蛍光イエローが広がった。