君と私で、恋になるまで





「つ、連れて帰るとは…」

突然の言葉に、私は働かない頭の中でも相当焦っているのに、肝心の目の前の男は気怠くて涼しい。



「病院は行きたい?」


私の戸惑いは華麗にスルーして、そう己のテンポで告げてくる瀬尾に再び固まる。


「え…、」

「枡川がどうしたいか言って?」


そう言ってふと表情を和らげて、未だ私をしっかり見つめる男。そんなの、甘えてしまいたくなる。




「…病院は、出来れば行きたくない。」

「うん。」

「でもスーパーとかには、寄りたい、かも、」

「ん、分かった。
タクシー呼んでるからもうちょっと待って。」


私の要望をなんてことない様子で受け止めた瀬尾は、そう言ってゆるく笑う。


なんで。

なんでこの人は、こんな風に私に接してくるの。


優しさに容易く触れれば、色んな聞きたいことが奥から湧いてくる。だけどそれを言葉にするのがぼうっとした頭と身体では、ままならなくて。






「…瀬尾が、分からない。」



導き出せない答えに募る焦燥感。

ぽろっと心のまま溢れた言葉に、目の前の男はじ、と耳を傾けていた。


「…同期への愛が、強いって知ってるけど、ここまでしてもらうのは、」

「は?なんの話?」

「………瀬尾は、同期が好きでしょう?」


「……俺、そんなお人好しに見えてんの。」


複雑そうな顔で、溜息と共に放った言葉に今度は私が首を傾げる。

まあ俺が悪いな、と独言を吐いた瀬尾はふと笑った。


< 156 / 314 >

この作品をシェア

pagetop