君と私で、恋になるまで
「つ、連れて帰るとは…」
突然の言葉に、私は働かない頭の中でも相当焦っているのに、肝心の目の前の男は気怠くて涼しい。
「病院は行きたい?」
私の戸惑いは華麗にスルーして、そう己のテンポで告げてくる瀬尾に再び固まる。
「え…、」
「枡川がどうしたいか言って?」
そう言ってふと表情を和らげて、未だ私をしっかり見つめる男。そんなの、甘えてしまいたくなる。
「…病院は、出来れば行きたくない。」
「うん。」
「でもスーパーとかには、寄りたい、かも、」
「ん、分かった。
タクシー呼んでるからもうちょっと待って。」
私の要望をなんてことない様子で受け止めた瀬尾は、そう言ってゆるく笑う。
なんで。
なんでこの人は、こんな風に私に接してくるの。
優しさに容易く触れれば、色んな聞きたいことが奥から湧いてくる。だけどそれを言葉にするのがぼうっとした頭と身体では、ままならなくて。
「…瀬尾が、分からない。」
導き出せない答えに募る焦燥感。
ぽろっと心のまま溢れた言葉に、目の前の男はじ、と耳を傾けていた。
「…同期への愛が、強いって知ってるけど、ここまでしてもらうのは、」
「は?なんの話?」
「………瀬尾は、同期が好きでしょう?」
「……俺、そんなお人好しに見えてんの。」
複雑そうな顔で、溜息と共に放った言葉に今度は私が首を傾げる。
まあ俺が悪いな、と独言を吐いた瀬尾はふと笑った。