君と私で、恋になるまで




それから数分後には、タクシーが少し離れた車道の脇に停まった。


私のバッグを持った瀬尾は、じ、とこちらを見つめている。さっきからその視線、ドキドキしてもっとしんどくなるからやめて欲しい。





「…抱き抱えるのと、おんぶ。

どっちで運べばいい?」


「なんで二択なの!?」


ゆるゆる告げられたそれに、私はより一層クラクラする。自分で歩く、という選択肢はなんで無いの。


頭痛は酷いけどなんとか立ち上がった私は、そのままタクシーへと歩みを進めた。この男、熱が出てる人を刺激しない接し方みたいなマニュアルを読んだほうが良い。


火照る顔と煩い鼓動を悟られなくて、ずんずん歩いているつもりの私に簡単に追いつく男はクスリと笑う。



いつもの、会話。
変わらない調子で交わされるそれに嬉しくなる自分ももちろん居るけど。



私達あの同期会の日、それなりに気まずく別れたと思うんだけどな。

瀬尾にとっては、そうでも無かったのかな。



そんな風に考えれば簡単に落ち込む気持ちを懸命に掻き消しながら、ゆっくりと足を前へ出す。




「そのスピード、日が暮れるわ。」

「っ、」


ロートーンで告げた男は私の右手を軽く握って、歩みを速めすぎずに、少し前を進んでいく。


この選択肢は、言われて無かったよ。









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