君と私で、恋になるまで
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「ありがとうございましたー!!またお待ちしてますー!」
すっかり顔見知りの店員さんの快活な挨拶にお礼を言いながらお店を出る。
「今日も美味しかったねえ」
「よく毎回同じものばかり食べられるよな。尊敬するわ。」
「ん?貴方もですよね?」
客観的に何言ってんの、あんたも同じもの毎度食べてるでしょうが。
まあそれはそう、なんてゆるく笑う瀬尾は少し酔っているのかもしれない。
でも、そんな奴の笑顔をずっと眺めてたいなんて思う私の方が相当酔っている。
まだまだ電車も元気に走る23時少し前。
これが、私と瀬尾とのタイムリミットだ。
どんなに話が盛り上がっても、瀬尾は決して23時の壁を越えることは無い。
上品な皮ベルトの時計を確認して、店員さんにお会計を頼む奴の姿に胸が切なくなるのはいつものことだ。
「じゃあ、行こうか。」
なんか考え出したら悲しくなってきた。
瀬尾と私は電車の線は違うが、乗る駅は同じなのでお店を出ても方向は同じ。
私は切なさを振り切るようになるべく明るい声でそう言って歩き出した。
_____筈だったのに。
「な、な、なに…!」
何故か隣の男は、私の二の腕を急に掴んで、進もうとする足を阻む。
突然の行動に訳がわからないとパニックになる私を見下ろす男は、いつもと変わらない気怠さで立っている。この感じでなんでこんな力強いの。