君と私で、恋になるまで
挨拶を兼ねての打ち合わせは、小1時間程で終了した。
会議室を出て見送ってくれる途中で、香月さんは「あ!今日渡そうと思ってた資料あったんだ、取ってくるから待ってて下さい!」と慌てて去って行った。
「…あれ、確かこの間コンペきてた方ですよね?」
ここで立っていて良いだろうかと、所在なさげにその場をウロウロしていた私は、後ろから突然そう声をかけられる。
「、あ、はい…!お世話になっております。
〇社の枡川と申します。この度は弊社を選んでくださりありがとうございます。
素敵なオフィスにしますので…!」
見知らぬ男性だが、勿論社員の方だろう。
そう挨拶をすると、何故だか男性は私をじい、と見て、それからにこりと笑う。
「前に遠目で見てても思ったんですけど、凄くお綺麗ですね。」
「……は、」
予期せぬ文脈の流れに、自然と声が漏れてしまった。
「よかったら今度、飲みに行きません?
俺も香月と同じ部なんで、これから打ち合わせとかご一緒できると思いますし!」
「そ、そうでしたか。
あの、また是非機会がありましたらよろしくお願いします。今度はうちのチームメンバーも連れて来ますので皆さんで行きましょう。」
なるべく笑顔で問いかけに答えようとするが、心臓が嫌なリズムで鼓動を刻む。
あまり上手く笑えていない気がして、それが余計焦りを掻き立てる。
嫌だな、そんなこと思いたくないのに、なんだかこの人と話すのは、少し怖いかもしれない。
「…なんか、香月と話してる時と雰囲気違うんですね。」
「……え?」
「…うちの香月と親密なご関係っていうのはやっぱり本当ですか?」
「、」
なに、それ。
どうしてそんなことが。
何か言いたいのに、冷や汗ばかりが出てくる私はうまく言葉が続かない。
先ほどまでの人懐っこい雰囲気とは打って変わって、目の前の男性は冷ややかな目を向けていた。
____違う、違うのに。