君と私で、恋になるまで
どうぞ、とジェスチャーで伝えれば、香月さんは申し訳なさそうに眉を下げて「すみません」と告げ、着信ボタンを押した。
そしてそのまま香月さんが席を立とうとした時、
"やっと出た!!!!
お前、央連れて今から飲みに来いって〜〜!!
昔からお前ら居たらまじで可愛い女の子が寄って…"
受話器越しで更に賑わう店内の筈なのに、香月さんの電話相手の声は私にもしっかりと届いてしまった。
そしてそこまで聞こえた瞬間、香月さんは勢いよく画面をタップして電話を切った。
「……か、香月さん。」
「央の言う通り、全く出る価値の無いものでした。
すみません枡川さん。
聞こえたかもしれませんが、央が昔遊んでたとか、そういうことは無いです。
不安にさせてしまいますよね、こんなの。」
「いえ、大丈夫です。分かっています。」
再び向かいの席に座った香月さんは、気まずそうに頭を掻いて、それでもあの気怠い男のことを伝えてくれる。
それに笑って応えながらも、なんだか少しモヤつく心には、気付いている。
なんでだろう。
香月さんの言葉はきっと本当で、瀬尾が適当な遊び方をしてきたかもしれないとか、そんなことは全然思ってないのに。
でも。
大学時代も気怠い様相のくせに優秀なあの男は、モテてきたんだろうなあ。
そう思うと、「何も気にならない」と言うのは嘘になってしまう自分が居る。
「……枡川さんは、もう少し我儘でも良いくらいですね。」
「え?」
「もっと央に、色々ぶつけても大丈夫だと思いますよ。」
ふわりと笑う神様のような彼は、本当にどこまでお見通しでお告げしてくれているんだろう。
何か私も言おうとしたけど、丁度タイミング良く戻ってきた瀬尾の登場で、それも立ち消えた。