君と私で、恋になるまで
結局全て奢ってくれてしまった香月さんに丁重にお礼を告げてから別れて、瀬尾と2人で地下鉄の駅の方へと向かう。
「…ちひろ。」
「ん?」
暫く特に何か話すことなく隣を歩いていたロートーンボイスにそう呼ばれて、何気なく顔を向けると、思った以上に近い距離で奥二重の瞳に見つめられていた。
「な、なに…!」
「疲れた?」
「へ?」
「今日。まあ普通に食欲は旺盛だったけど。」
「……」
ゆるい笑顔を近づけたまま、言葉短くそんなことを言う瀬尾に、私はきゅ、と唇を結んだまま立ち止まる。
あんなに美味しそうなおつまみが沢山あったのに、それでも自分の気持ちが下がる時の理由なんて、この男以外に、無い。
だけどそうは言えず「なんでも無いよ。」と笑えば、瀬尾は「ふうん。」と受け止めたのかどうか分からないトーンで頷く。
「そうだ、金曜日の夜空いてる?」
「今週?亜子と飲む約束してるけど。」
「あー言ってたな。俺も大学のゼミの飲み会あるけど程々で抜けるから。その後、連絡する。」
「…ゼミ…」
"いつも気怠い感じばっかりのくせして、ゼミでも結局優秀だったし。お前は本当可愛くない。"
"昔からお前ら居たらまじで可愛い女の子が寄って…"
なんでだろう。香月さんの言葉とか、あの電話の人の言葉がやけに頭の中をぐるぐるする。飲みすぎてしまったのかな。
____その飲み会は、女の子も沢山来る?
そう、素直に聞けたら良いのに。
「…瀬尾って大学時代、どんな感じだったの?」
「え?」
「いや…私ちゃんと聞いたことなかったと思って。」
「んー、あんまり覚えてない。でも普通の大学生。」