君と私で、恋になるまで
驚きのまま視線を上げると、そこにはペカペカの笑顔を携えた同期で1番元気で割とアホな古淵が立っていた。
「……え、なんで…?」
「島谷が!あの島谷が!!誘ってくれた!!!」
「…視界に入れてまだ5秒なのにもうしんどい。」
古淵のその発言にもっと目を見開いて、目の前に座る亜子を見るとげんなりと溜息と共にそう呟いた。
「え、本当に亜子が誘ったの…?」
4人席に座っていたので嬉々と亜子の隣に座る古淵を見ながらそう問いかけると、
「…あんた、私を1人にすると思ったら行かないでしょ。」
「……え。」
「あの童貞のこと、ずっと気になってる癖に。」
「…亜子…」
「大体朝までカラオケとか勘弁してよ。私はオールはしない主義なの。化粧は1時までに落とさないと許せないし。」
嗚呼、やっぱり予想通り断られてしまった。
隣の古淵はドリンクメニューを見ながら、きょとんとした顔で「童貞…?」と呟いている。
「…私はこのアホに奢らせたら適当に帰るから。
ちひろも気にせず童貞のとこいけば?」
ニヤリと悪戯に笑う亜子に、私も釣られてつい表情が解れる。
私は出会ってからずっと、あの男への気持ちを募らせ続けている。それはもう紛れもない事実。
そのくせに、臆病でヘタレな私は未だに気持ちをぶつけるのが怖くなる時が、沢山ある。
と、その瞬間、ブブ、とポケットのスマホが震えてメッセージを知らせた。
《枡川さん。
先日の余計な電話のお詫びにもならないけれど。
今日ゼミの仲間で飲んでるのは、
○駅にある創作居酒屋◇◇です。
美味しいお店なので、その共有だけです。香月》
嗚呼、もう。
大好きな同期にも、信頼しているクライアントにも、背中を押してもらってばかりで私は本当に情けない。