君と私で、恋になるまで
「の、飲み会は…」
「リーダーがいないのにつまらんって早めに解散した。」
成る程、それでちょっとお怒りなのか。
「ご、ごめん、埋め合わせはするから勘弁してくださ「今度はなんで泣いてんの。」
私の言葉を遮る瀬尾はやっぱり不機嫌な表情のままで。
"今度は"って、もしかして、3年前のあの時のことと照らし合わせているのだろうか。
「……瀬尾、私、リーダー降りる。」
「…は?」
「……先方の、窓口担当の人と私、噂になってるらしくて。」
俯いたまま、滑り落ちるように漏れる言葉は震えていた。
「そんな理由でコンペ選ばれたって先方に言われてるなんて、こんなことみんなに言えない。」
「…枡川、」
「ちゃんと引継ぎはするから大丈夫だよ。」
心配かけてごめんね、帰ろう
瀬尾の目を見られないままそう言った私は、2人で今こんな風に居るのは辛いと、デスク周りを片付け始める。
「腹立つ。」
「…え、」
静かな空間の中で急に響いた男の声は、いつもとは全く違っていた。
傍で立つ男からは、とにかく苛立ちが見えて私は思わず作業の手が止まった。
「何それ。勝手に降りるって決めて、それで終わり?」
「……、ちゃんと話はするよ。先方にも挨拶は行くし。」
「違う。その前段階でなんでもっと相談しないの。チームっていう割に信用ないんだな。」
だから、チームだって思ってるから、迷惑かけたくないんだってば。
「………せめて同期の俺には、何か言ってくれても良いんじゃないの?」
"同期"。
今はそれが、なんだか呪いの言葉のようにさえ思える。
なんか、もう、分からない。
目の前ののらりくらり、いつも私を惑わすくせに、こうやって急に少女漫画みたいに現れたりするこの男のことが本当に分からない。
泣きすぎて思考がうまく回らなくなった私は、全てを放棄したくなってしまった。
「な、なにが同期だ…!」
「……は。」
「ふ、2人で飲みに行っても健全に23時に解散する同期の瀬尾君に言うことはありません…っ!!」
「おい、!」
謎の言葉を大声で発した私は、そのまま鞄を引っ掴んでオフィスを飛び出した。
自分がもう本当にやらかしてしまったのだと気づいたのは、家について玄関を開けた時だった。