君と私で、恋になるまで
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無我夢中で走って、香月さんが教えてくれた駅まで辿り着いた。
それは良いけど、そこからの行動をきちんとシミュレーションしていなくて躊躇してしまう私は、「リーダーは勢いが凄すぎ」って気怠いあの男に笑われてしまうかもしれない。
「…とりあえず電話…、」
飲み会に水を差すのは嫌だけど、でも自分の気持ちを言うって決めたから。
そう誓ってスマホを操作していると、急に画面が切り替わって
《着信:瀬尾 央》
と、ずっと心を支配している名前が表示され、びっくりしてスマホを古典的に落としてしまった。
その瞬間、あっさりと切れてしまったようで慌ててかけ直せば
"切られたんですけど。"
と、ちょっと不機嫌なロートーンが耳を擽った。
「す、すいません動揺してしまって。」
"…枡川さん。"
「…はい。」
"飲み会、楽しいですか。"
「…え?」
"俺は一昨日の元気無い枡川さんの顔が全然チラつくし、そのくせに楽しんで、とか言ってくるし、心がモヤついてますね。"
「……、」
何それ。
そんなの、早く言ってよ。
自分のことを棚上げして、男にそう文句を言ってしまいたくなる。
でもその前に。
ハレンチでもメンヘラでも、もう何でも良い。
私は相当、厄介な女なんだよって、言ってやる。
「……私は、水曜からずっとモヤついてて…、」
"うん。"
「…瀬尾。
私、瀬尾への好きは相当重いんだよ。」
"………は?"
「忘れっぽい瀬尾には、分かんないと思うけど。
わ、私は、あの宿泊研修で見つけに来てくれた時からずっと瀬尾が気になって、もう相当、好きの歴史が古いというか、
だから、大学時代モテたのかとか気になるし、今日の飲み会は可愛い子居るかなとか思うし、その、面倒だとは思うけど私の好きはずっとそういう感じなので、よろしくお願いします。」
ぎゅうとスマホを握りしめ過ぎてもはや少し手が痛い。手汗も凄い。
顔が見えないことが幸か不幸か、ポロポロ漏れ出た言葉はとんでもない。
よろしくお願いします、とは…?
やっぱり締まらない終わり方にも、もはや倒れて気絶してしまいたかった。
人混みを避けて、道の端でしゃがみ込んで項垂れる私に、
"……枡川。"
届いたロートーンボイスはいつもと全然変わらなくて、どう思われてるのか怖い。
でも、まだもう少しだけ、伝えさせて欲しい。
「…いま私、○駅にいて…。
よかったら、一緒に、帰りませんか…?」
____央。2次会は、行かないで。
震える声のまま、自分の本心を言葉になんとか乗せた。