君と私で、恋になるまで
"……本当に○駅まで来てくれてんの?"
「え…、うん…?」
"お店分かる?"
「え……」
"もう出るから。俺のこと、連れて帰って。"
連れて帰ってなんて、普通は彼女の台詞なんじゃ無いのかなと思うのに、愛しさが先行してしまっている私が「仕方ない。」と了承すれば、電話越しにクスクスと笑い声が届いていた。
◻︎
駅から徒歩3分だと食べログに表示されていたそのお店は、割とすんなりと辿り着くことができた。
飲食店が軒を連ねる賑やかな風景の中で、「あのお店かな?」と目星をつければ入り口には沢山の人が集っている。
団体のお客さんだろうかとぼんやりそれを見ていると、
「枡川さん?」
と、その中の1人に名前を呼ばれた。
「…香月さん…!」
馴染みのある優しい声の彼は、笑顔のままその集団を少し離れて私に近づく。
「来られたんですね。」
「き、来ました…このお店美味しそうだったので…」
苦し過ぎる理由を告げる私なのに、楽しそうに「そうですか。」と彼は笑った。
「央、中でお会計やってくれてるんですよ。もうすぐ出てくると、「え!!皇、この子誰!?」
とても大きな、アルコールを多量に摂取したのが直ぐに分かる声が香月さんの言葉を掻き消す。
そのまま彼の肩に腕を回して近づく男性と、それを取り巻くような数人の男性が、まじまじと私を見ていて少し後ずさってしまった。
「え!お姉さん美人ですね!!
おい皇、お前既婚者だろうが何ナンパしてんだよ!!」
「お姉さん1人でどうしたんですか??」
「一緒に飲みます!?」
「2次会からの参戦オッケーですよ〜〜」
「…お前らうるさい。この人に寄るな。」
香月さんが一応制してくれてはいるけど、その騒ぎになんなら人がどんどん増えている気がする。
どうしよう。
正直に、瀬尾を迎えに来ましたって言っても良いのかな。