君と私で、恋になるまで
「__真飛葉子の映画じゃん。」
ドキドキとはやる鼓動が止まらない中、すぐに聞こえてきた瀬尾の声に思わず顔をあげる。
瀬尾は私が差し出したチケットを見ながら、少し驚いているようだった。
「え、あ、そうだよ。瀬尾、その人の映画好きなんだね。」
「うん、全部観てるかも。ストーリーがしっかり作ってあって面白いんだよな。」
そうなのか。私は映画に全然詳しく無いから分からないけど「瀬尾がそう言うなら観てみたい」なんてすぐそこまで出てきていた言葉を慌てて押し込んだ。
忙しい心拍は、予期しない言葉を放出させそうで厄介すぎる。
「舞台挨拶付きのチケット、今日香月さんに貰って、それで瀬尾がその監督の作品好きって聞いた、から。
あの、もし予定無かったら、「行く。」
一緒に行ってくれる?と言う言葉は、瀬尾の早すぎる返答に飲み込まれてしまった。
「…え、ほんとに?」
「絶対行く。」
瞳にいつもとは違う、少年ような輝きが見えて私は思わず笑った。
「本当に好きなんだね。」
「____うん、すごい好き。」
優しく奥二重の瞳を細めて笑う瀬尾に、完全にノーガードだった私は、心臓をギュ、と素手で掴まれたような痛みにも似た衝撃に襲われた。
本当に油断ならない。
でも香月さん、わたくし枡川は、なんとかミッションをクリアいたしました。
その日のうちに、平日には時間が無いからとネットで発送日を確かめながら新しい服を買ってる自分がなんだか凄く恥ずかしくなったけど仕方が無い。
誰にも言わないし良いよね、と自分で自分を納得させた。