君と私で、恋になるまで
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「あの男も、仕事くらい間に合うように死ぬ気でやんなさいよね」
「そんな無茶な。」
そうして今日の映画に、瀬尾の代わりに付き合ってくれたなんだかんだ優しい亜子は、口を尖らせて瀬尾に文句を言う。亜子は私に甘いけど瀬尾には何故か厳しい。
夕方から夜へ、橋渡しが行われてる最中の薄暗い空は、少しだけ私を寂しい気持ちにさせる。
なんか、想像以上に楽しみにしてしまっていたんだなあ、と、自嘲的な笑みが漏れた。
「亜子、行きたかったご飯屋さん予約してくれてるんだよね?」
「そう、スペインバルね。」
「この近くだよね、もう向かう?」
「うーん、多分歩いて5分くらい?この道まっすぐ歩いて突き当たりの〇〇ってビルを右に曲がったら
多分すぐわかると思うから。」
「……うん?」
急に道案内を提供してくれる亜子に私の頭にはハテナが浮かぶ。
すると。
「私は今日、スペインバルの気分じゃ無くなったの。」
亜子は綺麗に口角を上げて、そう言った。
「…はい?」
どこの我儘な姫様なんだとツッコミをしようとした時、亜子の視線は私では無くてその先にある気がした。
「感謝してよ、予約までしておいてあげたんだから。」
なんの話、そう言おうと口を開きかけた瞬間。
「__それはどーも。」
「、」
背後から、聴き馴染みのあるロートーンが聞こえて私はびくりと反応してしまった。
反射的に振り返ったその先には、いつものように気怠げで、だけど今日はそこに疲労と苛立ちを表情に滲ませた瀬尾が立っていた。