君と私で、恋になるまで
「瀬尾君、何飲む?」
「あー、ビールで大丈夫。枡川さんは?」
「私もビール!やっぱ枝豆にはビールだよね。」
既にテーブルに置かれたグラスを器用にひっくり返してピッチャーで注いだ後、ほい、と軽い調子で俺に手渡す。
こんな涼しい顔立ちして、おっさんみたいなこと言うんだな、と何となく表情が緩んでしまう。
「俺、古淵 洋介!よろしくー」
とナチュラルに会話に入ってくる古淵は、流石に対人スキルが高い。
すると、そんな彼女の隣に座っていた女も、
「島谷 亜子です。…瀬尾君、私のこと見えてた?」
と、ニヤニヤ俺にそう聞いてきた。
…なんかこいつ、同族嫌悪の感じがする。
そう思った俺は、ただにこやかに微笑んで無視をした。すると面白く無い、と舌打ちをしてきた。やはり勘は当たった。
◻︎
乾杯の合図と共に始まった飲み会は、最初こそぎこちなさがあったものの、アルコールとがやがやと騒がしい店内が助けになって会話が活発に交わされていく。
「へえ、瀬尾君は空間デザインの勉強してたんだ。
…難しそうだなあ、全然分からんけど。」
彼女は、梅水晶、たこわさ、塩辛という何とも渋すぎるラインナップに目を輝かせて箸を進めながらそう呟く。
なんか、適当に無理に褒めてこないところがいいな、とふと思いながら俺も言葉を続ける。
「…まあ院までやってたから、楽しいんだろうなとは自分でも思う。」
「ん?……大学院?」
「…ああ、うん。」
勢いのあった彼女の箸が急に止まる。
どうしたのかと俺も不思議になって彼女を見やると、不自然に視線を外して俺におずおずと飲み放題のメニューを見せてくる。
「せ、瀬尾さん。何をお飲まれますか?」
「……え、流石に無理じゃない?」
俺は素でそう突っ込んでしまった。
何だその急な変な敬語は。
目の前の女の考えていることがありありと伝わって俺は笑いがこみ上げてくるのが分かる。