ずっと一緒に旅をしていたオオカミが魔王だった件
「え、え、本当に? え?」

「……うるせぇな」

「アハハハ?! え? あの、狸が?! 罠にかかってた、あの狸が?! アハハハハハハ?!」

「だから言いたくなかったんだ……」

「いや、ごめんごめんっ。今のあんたとあの狸のギャップが凄くて。……大きく、なったね?!」

 ブフーッ! 言い終わる前に堪えきれなくなってまた吹き出す。
 そしえ一通りノヴァの笑いが落ち着いた頃ブライトが再び口を開いた。

「……落ち着いたか? 実は魔族だったお前が助けた子狸は、いつかお前に恩を返そうと。いつか、惚れた女を手に入れようと、あれからずっと計画してたんだ」

「それであの茶番と演技?!」

「演技力のことは言ってやるなよ。アイツらあれでも必死に練習したんだよ」

「筋書きもずいぶん雑だったよね?!」

「でもあれで世界が俺とお前の結婚を後押しし始めたんだから問題ないだろ。お前が頷きさえすれば、俺は本格的にこの国を治めてやる。だから──」


 お前が旅をしていた理由を教えてくれ。


「……そんなの、言わなくてもわかれバカ」

「そんなに可愛く拗ねるな。お前の口から聞きたいんだ」

「……狼のブライトになら教える」

「──そうか。オオカミのブライトになら教えるんだな?」

 ぞくり。何故か急に走った寒気に総毛立つ。

「……え?」

「お前が、オオカミの、俺をご所望なら、お望み通り獲物は美味しく食べてやらないとなぁ?」

「え?」

「あいにく、惚れた女に純情を笑われた傷心の俺は腹ペコだ。こりゃ、明日の朝までは食い続けないと満たされねぇかもしれないな?」

 犬歯が覗くいつもの魔王の笑顔。この笑い方は危険だ。経験がガンガンと警鐘を鳴らす。

「あ、ごめ、私、ちょっと用事を思い出して」

「聞こえねぇなぁ? ……覚悟、しろよ?」

「ええぇぇぇぇぇぇっ?!」



 後に記された書物『魔王と勇者の婚姻』によると、甘く変わった勇者の悲鳴は、次の日の昼まで城に響き続けたという。




fin
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