泣きたい訳じゃない。
「次は拓海の番だよ。聞きたいことは?」

「うーん、墓穴を掘るのは嫌だけど・・・。
俺が最初に彩華さんのことで嘘を吐いた時、本当はどう思ってたの?」

「本当は『嘘つき‼︎』って怒りたかった。でも、その後、仲直りする術がなくて不安だったから、言えなかった。」

本当は不安で仕方なかった。

「ごめん。」

「でも、今回はロスまで来てくれたから、許してあげる。」

「もう、嘘は吐かないから。莉奈も思ったことは言って。離れてても、絶対莉奈を離さないから。それから、来週はバンクーバーに来て欲しい。」

「えっ?」

予想外過ぎる。

「ここからなら飛行機で3時間だよ。来週の週末も莉奈と過ごしたい。」

「うーん、仕事がどうなるか分からないし。」

「それは大丈夫。莉奈が寝てる間に飛行機のチケットも取ったし、ロスの責任者の北村さんにも金曜日は莉奈を早く帰してもらうように言ってあるから。」

「えっ、金曜日に行くの?」

「そうだよ。金曜日の夕方の便を予約したから。その方が長く莉奈と過ごせるだろ。」

人の都合も聞かないで、勝手に決めるなんて。
やっぱり拓海は拓海だ。

私はこの人が好きだ。

拓海は夕方の飛行機でバンクーバーへ戻って行った。

私が空港まで見送りに行くと言ったら、莉奈の帰りが心配だからと拒否された。

拓海はこんなに過保護だったのかと呆れたけど、それがむず痒くて、嬉しくもあった。
来週はバンクーバーで会えると思うと、私は心からの笑顔で拓海を送り出すことができた。

明日から本格的に始まるロスでの仕事も頑張れる。
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