訳アリなの、ごめんなさい
トランの起こした事件は、王室の馬車を狙った許されざる事件として、世間に知れ渡った。

彼の目的は王族でなく、そのお付きであった彼の異母妹を狙ったものだった事も公表された。
彼は20歳の頃に初めて会った異母妹に恋慕したものの、その妹は身の危険を感じて叔母のもとに避難した。そして彼女は期を見て婚約者と結婚生活を送るために王都に出てきて王太子妃に仕えるようになった。

今回の事件は、結婚した異母妹にストーカーと化したトランが彼女を連れ去ろうと画策したもので、しかしすぐに彼女の夫を擁する騎士団に取り押さえられた。

連れ去られた時に異母妹は、異母兄の手に落ちる事に抵抗を示し命を断とうとしたが、一命を取り留めた。

トランが狙った馬車は王太子妃殿下の馬車でひとつ間違えば身重の王太子妃にも、害が及ぶ事になっていた。
王家はそれを鑑みて、厳罰を下す事が望ましいと姿勢を明らかにしている。



だいたいそんな事が王都の新聞を連日騒がせていた。

ほとんどが、狂った男の標的になったアリシアに対して同情的であったが、もっと下位層のゴシップ誌などには、兄を狂わせた妹がどれほどの美女なのかと興味を煽るようなものもある。

それを読んだブラッドはため息を吐いて、新聞の束を机に放った。


「流石に王族を巻き込んだ大罪だから、完全に伏せることできなかった。すまない」


「いえ、ここまでご対応頂いただけでも十分です。アリシアも、それについては理解をしていますから。」

謝らないでください。

そう言うと、殿下は少し悲しそうな顔で「そうか」と息を吐いた。


「司法局からは、トランの絞首刑が望ましいとの判断が出た。今日の午後にでも貴族院が議会でそれを了承するだろう。
問題は、爵位だ。これほどの重罪を当主が犯したのだから、ウェルシモンズ伯爵家は事実上取り潰される事になるだろう。アリシアには申し訳ないが、、、」

その言葉に首を振る。


「彼女も、それがいいと言っていました。一時的でも王家の所有地となれば領民達の生活は少しは豊かになるだろうと、、、」



「そう、言ってもらえると少し気分が楽になるよ。何しろ取り上げるのは#王__僕の父__#の判断だからね。」

そう言って殿下は、遠くを見つめた。

「そう言えば、、、トランの母親、、、ベルーナ・コーネリーンだけど。彼女については、差し押さえに向かった兵達にずいぶん抵抗したらしい。縛り上げられて今朝こちらに到着したよ。トランの証言が本当ならば、彼女はアーシャに対する暴行罪と、ここまでの息子の行動を煽って放置した罪が科される。辺境の修道院くらいには流すことも出来るだろう。」

「アリシアはトランの妻ミシェル・コーネリーンへの処遇を気にしていましたが」

「あぁ、テルドール商会の、、、あそこの会長はやり手だな。トランが問題を起こした途端、奴と娘の離縁状を貴族院に提出してきたよ。筆跡も問題なく本物だったらしい。いつかトランが何かやらかすかもしれないと思っていたのか、予め用意していたらしいな。彼女については婚姻したばかりの夫の不貞案件で、一切関わっていない上、アーシャの捜査に大いに協力したと言う事で、何の咎もなく、実家に戻っているよ」


「そうですか」

とんと、殿下に肩を叩かれる。


「お前もずいぶん疲れているな。アーシャはどうしてる?」

「まだ時々目眩があるみたいですが、随分と調子は良くなってきたようです。
たしか、、今頃妃殿下が面会にお見えかと」

「あぁそうなんだ。セルーナは最近ずっとアーシャの心配ばかりしているよ。こんな事があったから、彼女が役目を辞退するって言い出さないかそればかり心配しているよ」

「顔を見て開口一番に#暇__いとま__#は受け入れませんからね!と言われたと言っていました。」

「豪胆な、、アーシャは押しに弱いから、押し切るとは言っていたけど」

そこについては苦笑する。

多分自分のとった方法も、そんな感じだったから、彼女の事は言えない。
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