訳アリなの、ごめんなさい
「初夜は如何でしたか?」
ニコニコわらうセルーナ妃に、ため息を吐く。

この人言外にこういう話好きなんだなあって最近知った。

「つつがなく」

短くいえば彼女はとびきりの笑顔で微笑んだ。

「そう良かったわ!少しは素直になれて?」

そしてこの人は言外に鋭いのだという事を思い出した。

「5割と言うところでしょうか」
下手な隠し立てもできないと諦めた私は素直に答える。

「まぁ、随分な進歩ね!でも、もっと甘えても良いのでなくて?ブラッドはあなたから離れることなんてないわよ」

妃殿下の言葉に私は目を伏せる。

「そうでしょうか」

確かに初夜を過ごしてみて、私が恐れていた事態は微塵も起きなくて、逆にブラッドは私への執着というべきか愛情というべきか、、、まぁそういったものが高まったらしく、遠慮する事もなくなったために、私はそれを受け流すのに苦労している。

そして普段、仏頂面をしていることが多い彼が妻に向かって蕩け切った甘い顔を見せるのを、彼の同僚達が少し気味悪がっているのも、なんとなく察している。

そんな状況の中でも、私はまだ怯えていた。その理由が分かっているからこそ、どうしてもこの甘くて幸せなはずの時間を心から受け入れてられずにいた。

むしろ、その甘さと幸福感を知れば知るほど、失う事を想像してしまう。

しかし、そんな事情を知らない妃殿下は、何を言っているのだ!と私に言い聞かせるようにビシッと指でこちらを指す。
(お行儀が悪いですよー)

「そうよ!絶対に大丈夫!自信を持ちなさいな!」

彼女の強い言葉に、わたしは曖昧に笑う。


「もう!頑固ねぇアーシャは!まぁそれも信頼関係よね。これから育てていけばいいのではないかしらね。私達みたいに!」

妃殿下は可愛らしく唇を尖らせて、呆れたように息をついた。

「そんな、恐れ多い」
暗に王太子夫妻と同じ立場などと言われて、わたしは慌てて首を振ったが

「むしろ互いに思いあっているって言う時点で貴方のほうが話は早いとおもうのだけど」


にこりと言われて、二の句が継げなくなった。
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