訳アリなの、ごめんなさい
目を覚まして、手元にいたはずの彼女を探す。

そして考える

今何時だ?

ぼんやりした頭で考えて、そして落ち込む

まさか寝落ちするなんて。



ここ3日、彼女に触れることもできないで、殿下に帯同してずいぶん神経を使い、一晩馬上で道中の警護にあたり、それでも戻ったら妻を抱いて眠ろうと、神経をつないできたのだが。


まさか、肝心なところで、力尽きたのだ

情けない。

まるで身代わりのように腕の中に抱き込んだ枕はどうやら彼女が起こさないように配慮してくれたらしい

おかげで、ずいぶん頭はスッキリしている。

コンコンとノックの音がする


「お目覚めのお時間です」
控えめに開いた扉から侍女の声がする。

寝室に入る前に、彼女の朝食を用意している侍女に、時間を伝えて起こすよう頼んでいたのだ。


「ありがとう」

聞こえたのか、また扉は閉まった。

起き上がり、ベッド下の上着を拾い上げようとして、そこにないことに気がつく。キョロキョロと見渡してみれば、ベッド脇の椅子に、形崩れしないように丁寧にかけられていた。

たしか彼女は午前から視察だったはずだ、起こさないように身支度をして、自分の脱ぎ捨てた服を拾って大切に掛けてくれたのだろう。

悪いことをしたなと思いながらも、そんな彼女の気配を少しでも感じて休めたことが幸福で仕方なかった。





「結婚ですか、トランが?」


議会の昼休みにわざわざ近衛の宿舎を訪ねてきたノードルフ卿の言葉に、不躾ながら聞き返してしまった。

宿舎に戻り、着替えを済ませ昼食を取った所だったので、彼を共有スペースの応接用のテーブルに誘うと、彼の口から出た言葉は、驚きの情報だった。


「妹のアーシャとその夫である君にも結婚式の招待状がきたんだが」

「ヌケヌケと」

ノードルフ卿の言葉に低くうなると、彼も同じ意見らしく、ゆっくり頷いて髭をしごいた。

「手紙はうちで預かっているから、一度アーシャに処遇をきいてみてくれ、妻もこちらに来ているから、日曜にでもお茶をしに来るといい。他にもここでは言えない細々とした情報もあるのでな」


「わかりました。」

そう言うと、ノードルフ卿は話は終わったとばかりに、帰って行った。
< 82 / 116 >

この作品をシェア

pagetop