燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~


 先生はふっと表情を暗くして、

「……うーん」

と言いながら、けっして頷いてはくれなかった。

「どうしたの?」
「他は?」
「え?」

 私は先生を見る。先生ってなんだかんだ私に甘くて、たいていは何でもOKって言うくせに……初めて否定されたかも。

 私は一つの理由に行き当たると、

「やっぱり、前の私との思い出の場所って行きづらいってことですか?」

と聞く。

 もしかして、先生は『3か月間の私』との思い出の場所を大切に思っているんじゃないだろうか。
 そんなことはこれまでも先生の言葉や態度の端々に感じていた。

 思い出せない私の気持ちと反比例するように、先生はその『3か月間の私』との思い出を大事にとっておきたいと思っているような気がする。しかも私は私で、それをなかなか思い出せない。

 だから、先生は、私とはなかなか一線を越えてくれないのかもしれない。

 そんなことを感じるたび、私はなんだか『3か月間の私』に嫉妬心に似た何かを感じてしまうんだ。
 大丈夫だって思っても、やっぱり節々で嫉妬しちゃう。自分に嫉妬するって、変なの。

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