燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~


 心療内科に行ってみると、顔見知りのベテラン看護師の野中さんが声をかけてきてくれた。

「ごめん、つばめちゃん、もう少し待ってて」

 それはもちろん覚悟していた。

 工藤先生は心療内科の看板を背負う優しい医師で、患者さんの話をしっかり聞くことで人気がある。ただ、そのようなスタイルなので、待ち時間に関して言えば長くなりがちで有名だ。

 それに何も言われないのは、工藤先生自身の人徳と、なぜか俳優や大物政治家などにもやたら人気があるからかもしれない。


「もちろん。きちんと順番通りにお願いします。工藤先生は大丈夫でしょうけど」
 私は野中さんに笑う。

「天馬先生はつばめちゃんのこととなると、ねじ込みそうだもんね」

 そう言われて、天馬先生ってそんな風にベテラン看護師に思われているんだと苦笑した。

「なににしても、職権乱用したら口きかないって言ってますから大丈夫です」
「あはは。それは天馬先生にとってはキツそうだわ」

 そう言われて恥ずかしくなった。
 周りにそんな風に認識されているのは、なんだかやっぱり恥ずかしい。

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