燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~


 あたしはそれから、病院の中を探し回っていた。

 会っちゃダメかもしれないという気持ちと、
 会いたい気持ちが混じっていて、でも、本能のままに足が勝手に動いていた。

 探し回って見つからなくて、
 残念な気持ちとほっとした気持ちが交差する。




 諦めて病院を出たところで、背広を着た大きな背中が目に入った。

「待って!」
 思わず叫んでいた。

 振り返ったのはさっきぶつかった男の人で、それを確認すると、あたしはその人のところまで走る。


「……なに?」
「あなた、誰なんですか?」
「俺は」


 言いかけて、「本当に何も覚えてないのか?」

と男の人は言う。


「……はい」

 あたしは頷いた。
 困ったような表情で男の人はあたしを見る。


 あたしは息をのむと、

「教えてください。あたし、知らなきゃいけない気がする。あたしとあなたはいつ会ったんですか?」

と聞いた。


 だって不思議だった。
 この人を見て、脳裏に流れた最初の映像に映ったのはこの人じゃなかった。


「俺は怪しいもんじゃない。こういうものだ」


 そして差し出されたものは……。

< 189 / 350 >

この作品をシェア

pagetop