燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
あたしはそれから、病院の中を探し回っていた。
会っちゃダメかもしれないという気持ちと、
会いたい気持ちが混じっていて、でも、本能のままに足が勝手に動いていた。
探し回って見つからなくて、
残念な気持ちとほっとした気持ちが交差する。
諦めて病院を出たところで、背広を着た大きな背中が目に入った。
「待って!」
思わず叫んでいた。
振り返ったのはさっきぶつかった男の人で、それを確認すると、あたしはその人のところまで走る。
「……なに?」
「あなた、誰なんですか?」
「俺は」
言いかけて、「本当に何も覚えてないのか?」
と男の人は言う。
「……はい」
あたしは頷いた。
困ったような表情で男の人はあたしを見る。
あたしは息をのむと、
「教えてください。あたし、知らなきゃいけない気がする。あたしとあなたはいつ会ったんですか?」
と聞いた。
だって不思議だった。
この人を見て、脳裏に流れた最初の映像に映ったのはこの人じゃなかった。
「俺は怪しいもんじゃない。こういうものだ」
そして差し出されたものは……。