燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
「……刑事? 大熊健司さん」
「……あぁ」
テレビで見たことあるような警察手帳だった。
名前は大熊健司、とある。
熊みたいだと思ったけど、本当に熊って言う名前だったんだ……。
そう思うとふっと笑ってしまった。
「え? な、何で笑う」
「だって、大熊さんってぴったりの名前だって思ったから」
「よく言われる」
困ったように大熊さんは頭を掻いた。
「やっぱりあたし、大熊さんに前に会ったことがある? 刑事さんになんで?」
「思い出したのか?」
「ううん」
あたしは首を横に振った。「でも、少しだけさっき思い出して……男の人が目の前に」
そう言いかけた時にまた頭が痛くなる。
頭の中でドラム缶を叩くような大きな音がして、あたしはおもわず頭を押さえて座り込んだ。
その時、
「おい、大丈夫か⁉」
そう言われて、大熊さんに腕を掴まれた。
その瞬間、『その日』のこと、まるで映画でも見るように、思い出していた。