燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
「思い出したの……。全部じゃないけど」
「……」
麗子先生が黙り込む。
「あたし、男の人に無理やり、そういう事されたんだ」
「もういい。思い出すことなんてない」
「……そっかぁ」
麗子先生のつらそうな様子を見て、
あたしは、そっかぁ、と繰り返す。
さっき大熊さんに腕を掴まれた時、フラッシュバックした映像は、
本能的に身体が震えあがるほどのものだった。
大柄の男に無理矢理腕を持たれ、押さえつけられた。
着ていたワンピースを無理やり剥がれ、あたしは……。
でも、それはやけに現実味がなかった。
頭では分かるんだけど、まだ自分ごとに捉えられていないのかもしれない。
「……拓海が最初の相手だったら良かったなぁ」
「つばめちゃん……」
勝手に涙はぽたぽたと落ちていた。
何でかなぁ。
反射的に呼んだ名前は、『天馬先生』だったことだけはやけに鮮明に覚えていた。
―――ねぇ、『つばめちゃん』。
あなたはとっさになんでその名前を呼んだの?