燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~


 その日は、工藤の診察でつばめが病院に来ていた。

「天馬先生、今日つばめちゃん来てます?」
 診察と診察の合間、看護師の向井さんが言った。

「え……どうしてわかるの?」
「天馬先生は、次の患者さんで午前最後ですからね? もう少しです」
「ありがとう」

 向井さんは長く外科の看護師と言うだけあって、なんでもよく気がつくし、
 そしてなんていうか、彼女も油断ならない。

 他の看護師もそうなんだけど、みんな事情を抱えながら、
 でも他人にも優しくて……東雲総合病院という病院はそういところだと思わされる。

 それは東雲病院長はじめ、全員が積み上げて来たもの。
 それに一生懸命なつばめちゃんが加わって、よりそういう傾向が強くなった。

 僕はここで働けていることが、結構自慢だった。




 もし、僕が犯人を見つけて、
 僕が暴走したら……ここは、一体どうなるんだろう。


 そんなことを思ったけど、僕は考えないように頭を振った。

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