燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
去っていく男の後姿を見つめていると、やってきた一条先生が、どうしたの、と声をかけてきてくれた。
私が男の後姿をチラリをみると、一条先生は、
「あぁ! 大熊さん!」
と言って走り出す。「また病室抜け出したんでしょ!」
あの人、『大熊さん』って言うの⁉ 名前と見た目、ぴったりだな。
そんなことを考えながら、一条先生を目で追う。
大熊さんはぐるりと振り返ると、鋭い目で、
「もう退院させろ」
と一条先生を睨む。
「だめです。アキレス腱切れてんですよ。しかも不摂生と過労で内科の血液項目も再検査ありますから」
「でも」
「だ・め!」
一条先生は狂暴そうなクマ相手にもはっきり言う。さすが一条先生だ。
そんな姿にもうっとりしてしまう。
その時、天馬先生もやってきて、一条先生は天馬先生に、
「天馬先生。大熊さんが退院させろって言ってます」
「大熊さん、まだだめですからね」
とはっきり言った。
「……ちっ」
大熊さんは舌打ちをすると、その場を不機嫌そうに去っていった。