燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~


「よかった。結婚した時の記憶ないとき……最初ね、混乱してたから」

 工藤先生は私の横を歩きながら言う。


「……でも、ずっと天馬先生は婚約者だったし」
「そうだね」
「結婚するだろうっていう覚悟は、もともとしてましたから」


 私が言うと、工藤先生は、ぴたりを歩みを止めた。


「そういう『覚悟』だけだった?」
「え?」

 私は首をかしげる。

「僕は、あの時も……記憶をなくす前も、つばめさんは天馬のこと、好きになってきてたと思ったけどね」

 工藤先生は言う。


 私は首をひねる。あの時の私は……一条先生と天馬先生がお似合いだって思ってた。
 それは二人がとても仲良くて、ドラマに登場した二人みたいだったから。


「……そうでしょうか」

 私がつぶやくと、工藤先生は苦笑する。


「まぁでも、想像以上に、前のつばめさんは鈍感だったから。勝手に二人を恋愛の枠に押し込めて、それを眺めて見てた傍観者になろうとしてたでしょ」

 そうだったのだろうか。
 私は……確かにあの時の私は自分が恋愛するなんて思ってもなかった。

 でも、3か月間の記憶がなくなって、何もかもが変わっていた。
 そう思っていた。

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