春永すぎて何が悪い?
「いやさあ、もうレディース物置くの辞めようと思うんだけど、どう思う?」

突然龍樹が店の話題を振ってくる。

「あー、それもいいかもね。どうせ女来ないっしょ。」
「そうなのよ。売れないしさー。よし、奈穂ちゃんもそう言うなら、冬物からやめよー。」

そう言ってお互いにスマホをいじりかけた時だった。

「えー、私いっつもかわいいなーって外から見てましたよー。」

りっちゃんが会話に入ってきた。

「店に入る勇気はなかったですけど。」

そう言ってお口をキュッとしぼませる。
可愛い子にしか通用しないやつだ。

そう言われて龍樹が固まってる。

何か言いなよ。

ほんと龍樹って不器用。
意外とこういう可愛い女の子に慣れてない。

「・・・だってよ?」

私が龍樹に返事を促す。

「・・・あー、でも、売れないと意味ないし。」

龍樹の口からやっと出てきた言葉がこれ。
他に気の利く言葉出てこないの?

「なんかぁ、ちょっと女一人だと入りにくいんですよねえ。」

りっちゃんが上目遣いで言う。

「なんでなんで。言って言って。暗い?狭い?臭い?なんで?」

やっと龍樹が前のめりになった。

「暗いし、怖いし。」
「怖いって俺?安くん?」
「んー、なんていうかぁ・・・雰囲気?」

そうりっちゃんは誤魔化すとキッチンのダンさんに呼ばれて引っ込んでいった。
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