春永すぎて何が悪い?
「・・・どうしよ。」

龍樹が私の方を見る。

「自分で決めたら。」
「奈穂ちゃーん。」
「知らないよ、自分の店のことでしょ。」

そう言いながら、ふと龍樹の目にかかる前髪が気になる。

「龍樹、そろそろ髪切ったら。」
「うわー、そうやって話すぐ逸らす。」
「いや、龍樹の見た目怖くて入れないんじゃない?女の子たち。」

龍樹はスマホのカメラ機能で自分を写し出す。

「怖い?俺?」
「怖いんじゃない?若い子からしたら。」
「どうすればいい?」

すぐこれ。
何かと龍樹は「どうしよう。」「どうすればいい?」。
昔からそうだった。

でも最近はそういうことも減っていたから、懐かしく感じる。

「切ったら?もうちょっと、さっぱり。」
「奈穂ちゃん、いつ空いてる?」
「明日の夜、いいよ。」

龍樹の髪を切るのは私の役目だ。
ここんところ色ばっかり変わってるだけで、そんなに大きく変えてない。

龍樹は今の髪型がなんだかんだ一番似合ってる気がしてしまう。

自分で切ってるから、そりゃあそうか。
龍樹は何も希望を言ってこないから、いつも私が切りたいように切っていた。

りっちゃんがカレーを運んでくる。
龍樹のは肉の量がヤバい。

「太りそう。」
「俺、太った。」
「やっぱり。」

龍樹が子どもみたいに笑う。

その笑顔を見た時、ふと、あ、今日の私たちいい感じかもって思う。
これなら、もしかしたら、もしかしたら・・・

急にドアのガランゴロンとした重いベルが鳴る。

無意識にドアに視線を向けた。

「あっ・・・」
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