捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました

「わーい」
喜ぶ瑠偉に私は何も言えなくなる。そんな私に瑠偉は手を振り二階へと上がって行ってしまった。
うそでしょ? この後私が祥吾さんの寝室へと行くの?
ザワザワした気持ちのまま、後片付けをして、瑠偉の制服のアイロンなどをかけ始めた。
そこでリビングの扉が開くのが解り、私はドキっとして動きを止める。

「瑠偉はぐっすりだよ」
再会してから私に話しかける、苛立ちを含んだ声ではなく、父親として愛情を持ったその言葉に、私も構えることなく答えていた。

「昔からよく寝る子だったから」

「そうか」
それ以上何も言えい私に、祥吾さんはキッチンへ行くと缶ビールを手にする。

「なんにせよ、瑠偉をいい子に育ててくれてありがとう」

不意に言われたその言葉の真意が読み取れず、私はつい祥吾さんの方を見た。
「どういう意味?」

「そのままの意味だよ。素直ないい子だ」
他意はないようで、私は小さく息を吐くとまたアイロンをかけ始める。
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