捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました

昨夜あまり眠れず、珍しく目覚まし時計より前に起きた俺はそっと隣を見る。
もちろん、瑠偉もいないし紗耶香もいない。

そんな時、リビングから楽し気な声が聞こえてくる。
いつも会社と家の往復のみで、人の気配など感じたことがない俺は不思議な気持ちが広がる。
静かに様子を見たくてリビングへ行けば、紗耶香と瑠偉が楽しそうに朝食をしているところだった。

「ママ、これタコ？」

「そうよ。タコさん」
お皿の上に置かれたウインナーの話をしているようで、瑠偉は一生懸命ウインナーをフォークで刺し、ぱくりと口に入れる。

「あ、パパ」
俺に気づくと、瑠偉は嬉しそうに笑顔を向ける。そんな瑠偉に俺も「おはよう」と微笑んだ。
その声に紗耶香がビクリとしたのが解り、胸がギュッとなる。

「紗耶香、おはよう」
それでも俺はなんとか声を掛けると、紗耶香は驚いたように振り返った。