捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました

「いや、キスして欲しそうな顔してた」
サラリと口にしたその言葉に、ブワっと顔に熱が集まる。きっと私の顔は真っ赤だろう。

「どうして……」
今まで絶対に上司と部下との関係から逸脱してこなかった。それなのにどうして? その言葉がグルグル頭を回る。

「どうしてって、ただなんとなく? それにしても紗耶香なら怒るかと思った」
この人にとっては理由などないのかもしれない。私の気持ちなど全く知らないだろう、面白そうに言葉にするその姿に苛立ちにも似たものが募る。

「こんな挨拶みたいなキスで怒るわけありません」


そう、この言葉が二つ目の間違いだった。私と常務との関係を変えてしまった。
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