捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました
「どこに行くんですか?」
いつも決まった都内のホテルに向かう道ではなくて、私は常務に問いかけた。

「俺の家」

「え? どうして?」
つい敬語も忘れ言葉にした私に、常務がチラリと視線を向ける。

「俺さ、枕変わると眠れないんだよね」

「はあ?」
訳の分からない言葉に、私は唖然としてポカンとした表情を浮かべたのだろう。
これが本当なわけはない。出張だって何度も行っているし、北海道の夜は朝まで一緒だった。先に起きたのは私でどうしていいかわからず、常務の寝顔を少しだけ見て自分の部屋にもどったのだから。

「そんな嘘通用しません」
そんな私の抗議などまったく無視すると、常務は鼻歌を歌わんばかりの機嫌のよさでハンドルを回す。

「常務!」

「祥吾だって言ってるだろ」
ゾクリとその声に自分が反応するのが解る。仕事モードではなく甘美な音を含むその声に私はギュッと唇を噛む。
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