捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました
「東和社長、今回は見逃します。次に我が社の社員にこういったことをするならば、こちらにも考えがあります」
専務の威圧的な言葉に祥吾さんも冷静になったのだろう。肩をすくめると私の腕を離す。
「大村専務、失礼いたしました」
仕事に支障が出るのはまずいのだろう、表情無く専務を真っすぐにみた祥吾さんは静かに頭を下げる。そして踵を返した。
「紗耶香、またな」
″またな“仕事でもちろん会うのは解っている。しかし今のそれは確実に違っていた。
ぞくりとして、背中に冷たい汗が流れ落ちる。どうしてあなたがそんなに怒っているの?
ギュッと手を握りしめたままの私に、専務が静かに声を掛ける。
「帰れるか? 送る」
「はい」
目の前にはいつの間にか、専務の社用車が回されており、運転手である三井さんが立っていた。
促されるように後部座席に乗ると、私は涙が零れ落ちないようにするのが精一杯だった。