嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
「先に言っとくが、逃さないからな」

 まるで美琴の心を読んだかのようなタイミングで彼はそう言った。そして言葉通りに美琴をつかまえると横抱きにして立ち上がる。

「あぁ、やっぱり似合う」
「え?」
「その浴衣。君に似合うと思った」

 パジャマ代わりにと礼が用意してくれたのは淡い桜色の浴衣だった。なめらかな生地で着心地はとてもいい。

「あの……本当に私でいいんですか? 同じ契約をするにしても、私より御堂さんにふさわしい女性はいっぱいいる気がするんですが」

 どんなものにも、やはり釣り合いというのはあるだろう。自分と彼ではあまりにも不釣り合いだと美琴は思う。もっとふさわしい相手を見つけたほうが礼のためにもなるんじゃないかと訴えた。だが、礼は笑って首を横に振る。
 
「俺は君のアドバイスを実践することに決めたんだ」
「私のアドバイスって」
「出会った女性に心を開けと言ったのは君だろう。愛を伝えろとも言ったな」
「それはその……」

 たしかに言った。だが、その女性の中に自分は含めていなかった。

「俺は君に愛を伝えることにするよ」

 礼はきっぱりとそう言うと、美琴を抱きかかえたまま襖を開けた。ふたりきりの長い夜が、いま、幕を開けようとしている。
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