嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
「あぁ。うちが贔屓にしている呉服屋のお嬢さんでね」
「は、はい。秋月美琴と申します。お誕生日おめでとうございます」

 美琴は慌ててまりえに頭を下げた。

「さっき、同じ色の着物の方がいるなって思ってたの。礼さんのお連れの方だったのね」

 まりえは美琴の顔をじっと見ている。その視線に少し冷たいものを感じた気がした。

(同じ色なんて、気を悪くさせちゃったかしら)

「とっても素敵な着物ね。それに、その指輪も」
「あっ」

 美琴はとっさに自身の右手を隠した。礼の贈ってくれた婚約指輪。翡翠色の振袖はこの指輪に合わせて礼が選んでくれたもので……指輪をしないという選択肢はなかった。でも、左手にしろと言う礼と右手にしたいという美琴でかなり揉めたのだ。

(だって、左手の薬指につけて礼さんにエスコートされてたら、きっと誤解されるもの)

 結局、美琴の粘り勝ちで指輪は右手の薬指におさまった。まりえはにこやかに微笑みながら、続けた。

「もしかして恋人から? こんなに豪華な指輪を贈られるなんて、愛されているのね。羨ましいわ」
「えっと、その……」

 美琴が答えに窮していると、横から礼がいらぬひと言を口走ろうとする。

「これは俺が彼女に」
「わぁ!」

 美琴は慌てて礼の口を塞いだ。すると、ちょうどそこに恰幅のいい紳士が現れた。

< 58 / 107 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop